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菜の花忌

菜の花忌

少し過ぎてしまいましたが、2月12日は菜の花忌でした。

なんのこっちゃ・・・。

実は、作家 司馬遼太郎の命日です。

歴史小説をいろいろ読みあさってきたけれども、家にある

小説の中で一番多いのは、氏の作品である。

もちろん氏の作品の多さもあるが、たくさん歴史小説家と

いわれる人がいるなかで、圧倒的にファンだったことの

結果だと思う。

一番初めに読んだのが何かは忘れてしまったけれど、たぶん

”国盗り物語”だったような気がしますが、彼がかく歴史は

いつのまにか自分の歴史観の大きな部分を占めてしまっている。

歴史学者や歴史研究家の方たちからは司馬史観といわれて

独自の歴史観だといわれていますが、私にとっては

まず司馬史観ありき、あとからそれが氏独特の考え方である

ことを知る、そういう順番でした。

その史観を作り上げたのは膨大な量の資料や文書の調査、

そして実際に現地へ行っての聞き込み(刑事じゃない?)に

よるもののようですね。

また聞くところによると彼は速読の名人だったそうです。

人と対談をしながら一冊の文庫本を読んでしまったとか、

たぶん字を見ながらの要点読みだとは思うが、

すごい速さだったようです。

たしかに資料を調べて、自分なりの流れを作り、

小説にするわけですから、氏の作品の多さから見ても

のんびり読んでいるわけにはいきませんよね。

そして現地調査、書こうとする作品の主要な土地へ実際に

赴き、土地柄、その土地の雰囲気まで調べ上げる。

それは”街道を行く”という紀行文になっているのだが、

小説を読んだ上で、この旅の様子を読むと、また

違った面白さがあって、これにも結構はまりました。

その時その人物が何を考えてどんな行動をとったかを、

今その土地で生きている人たちから何かヒントを

得られないか、そんな旅をしている。

”街道を行く”こと自体が司馬遼太郎のライフワークで

あるかと思うほど旅もお好きだったようですね。

そんな中から生まれた司馬作品。

初めて読み出した時から、毎作品が面白くて面白くて、

読みあさっていましたが、ある程度読んでいった時に、

一番印象に残っていた作品はというと、土佐の戦国大名

長宗我部元親を描いた”夏草の賦”。

司馬氏にとってはたんたんと生み出していった作品の

一つかもしれないけれど、なぜか頭に残った作品でした。

土佐から勢力を広げだし、四国全土を手にしようとした矢先、

信長、秀吉という大きな壁に阻まれ、泣く泣く膝を屈する。

他の三国を手ばなし、また土佐一国に押し込められてしまう。

しかし、それだけではすまず、宮仕えのつらいところ、

秀吉の九州島津攻めの時、あほな上司のせいで、

有能で将来を嘱望されていた最愛の長男、信親を死なせてしまう。

がっくりきた元親は四男盛親に家督を譲り、一気に覇気を

失ってしまう。

この長宗我部信親、享年22歳だった言われるが、

非のうちどころのない青年だったようで、身の丈六尺一寸、

当時男でも160cmほどが普通の時代に185cmは

巨人に見えたかもしれません。

色白柔和にして、勇猛果敢、戦上手で家臣、領民にも

人気絶大。

九州島津氏との戸次川の戦いにおいて、豊臣氏の

軍監・仙石秀久の無謀な進撃命令のため、土佐勢

の主力二千名と共に敵中に孤立してしまう。

この時仙石秀久くんはさっさと逃亡していたそうですが。

何万という島津勢とたった二千人の土佐勢、戦いの結果は

決まっていますが、この時、信親と土佐の重臣たち、それに

剽悍で知られた一領具足と呼ばれる土佐の地侍たちは、

当時でも信じられないような戦いを行います。

重臣たちは全滅、全体の戦死率は7割を超えていました。

普通、軍用語で全滅というのは人が全部死ぬことではなくて

軍としての機能が果たせないことを指します。

だから戦死率で言えばひどい戦いでも3割。

つまりある程度やられれば逃げ出してしまうというのが普通。

だから7割の戦死率というのは誰も逃げず、誰も降参せず

徹底的に戦った証であり、誰よりも相手の島津側が驚き、

元来、勇猛であることに非常に重きを置く家風であることや

他の豊臣軍がさっさと逃げ出してしまった事もあり、

信親の遺骸を丁重に扱って返還し、土佐勢全体に

最大限の敬意を払ったようです。

そんな息子を失った元親の失望は察してあまりあります。

なんにもする気がなくなったとでも言いましょうか。

司馬遼太郎もそんな元親の身になって作品を

書いていたのかもしれません。

私にとっては妙に印象的な一冊でした。

もうひとつ、”坂の上の雲”。

今年から、スペシャル大河ドラマという位置づけで2,3年かけて

完結されるテレビドラマ化されるようです。

司馬遼太郎自身、戦時中は大陸で戦車に乗っていた

こともあって、日本人は何でこんな馬鹿な戦争を

おこしてしまったのかという思いを持ったようで、そのことが

日本人には過去にはもっと素晴らしい人間がいたはずだと

考え、歴史小説を書き始めたという話もあります。

あの戦争の是非もあるし、現在の日本を見ても首をかしげるような

政治家が多い中で、未曾有の国難に際し政治家も国民もひとつに

なってそれに対抗し何とかしのぎきった明治の日本に対し

ある種の憧憬を感じていたのかもしれませんね。

私もこれをはじめて読んだ時に、太平洋戦争を描いた小説や

戦記を読んだ時と比べて国や軍の非合理性を理由にした

損害、犠牲の話が少ないことが読んでいて心地よかった。

ただひとつ日露戦争の中で消耗戦となった旅順攻略戦において

これを指揮した乃木希典をこきおろしてしまっています。

司馬遼太郎にとってこのときの乃木は昭和の日本につながる

精神主義のかたまりのように見えたのかもしれませんね。

ただ明治維新を経て藩の領民でしかなかった民というものが

はじめて日本国民という意識を持ち出した明治の日本は、

いろんな意味で活力にあふれていたんだろう。

愛媛にいた普通の兄弟が兄は世界最強と言われたロシアの

コサック騎兵に対し、矮小な日本騎兵を指揮して少なくとも

負けなかった、そして弟はロシアのバルチック艦隊との決戦において

その作戦を立案し圧倒的な勝利を演出した、またその友人は

俳聖、松尾芭蕉以来の俳人として名を成す。

この三人を中心に話は進んでいきますが、たしかにそこには

かっこいい日本がある。

結局、司馬遼太郎は日本人を大好きでいたかった、そのために

かっこいい主人公を作り続けたのかなとも思う。

彼の作品を読んでて思うのはその主人公の一番のファンは

彼自身であるということ、”龍馬が行く”の中の龍馬を

司馬遼太郎は好きで好きでたまらなかったんだろうね。

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コメント

国盗り物語は俺も読んだけど、読んでる途中でこんがらがって来て、最初から読み直す事三度。 終わったときはほっとしました^^。


因みに、俺から見たら君も充分に巨人やで。
身長も体力も根性もね^^

司馬さんを語らせたらジャンさんには負けませんから~っ!!
作品も片っ端から読破しました。
そもそも私が竜馬ファンになったのもこの人の作品に依るもの。
生涯昭和を描かなかった司馬さん。
戦争実体験の生々しさなのか司馬さんにとっての昭和は美しくなかったのか。
司馬が書く東条英機なんて読んで見たかったです。

Dさん
確かに歴史小説は人がいっぱい出てくるから
最初はこんがらがりますね。
日本の歴史はまだ知っている人が結構いるからましですが、三国志を初めて読んだときは、話の筋よりも人の確認ばっかりしていましたのを思い出しました。これも根性か?

tacocoさん
昨今の坂本龍馬人気は、司馬遼太郎のせいと言ってもいいですよね。
”龍馬が行く”は、なんといっても彼の傑作ですもん。私も大好きです。
でも司馬史観に批判的なほうからみれば、
龍馬一人で幕末を動かしたみたいな書き方は
おかしいということになるみたいです。
司馬が東条英機を書けば乃木以上にこき下ろすでしょうね、それも痛快かも。

司馬遼太郎、私も彼の作品は講演集も含めてほとんど全て読みました。昭和以前は日本人という概念がない中で、『個』の志が世の中を動かしていたような気がします。
昭和以降は『国』という物に人々が翻弄され、あるいはチームワークという形で事業を成していく。吉村昭の作品は昭和の史実に基づいた組織力を描いていて、こちらも面白いですよ。
三国志、高校生の頃は吉川英治文庫にどっぷりでした。

もっくん
さすが!歴史小説もOKですか。
吉村昭は事件とかプロジェクトを題材にした作品が面白いですね、”高熱隧道”が印象的でした。
高校時代から三国志ですか?
私の歴史小説の読み始めは山岡壮八です。
風呂の中で本を読む習慣があるんですが、
山岡の"織田信長"を読み始めたのはいいが、面白くてやめられなくなって、5時間
風呂の中にいたことがあります。
湯舟にどっぷりはつかってなかったですが・・・。

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